
勝手に街に昔の面影を求めてやってきた僕はさっきの酒屋さんの言葉に否が応でも目が
覚め現実に戻る。
確かに安浦の街は変わってきているのだろうし、もう誰も過去のことなど今更気にも
留めないのがそこで生活している人たちの日常なのだろう。
そう思いながら気を取り戻して古い民家を撮影しようとカメラを構えると、70歳前後の
老人が町内会のチラシかなにかを各戸に配っていた手を休めて僕に声をかけてくれる。
「古い建物を撮っているの?。この辺は多い時で88軒の遊郭が軒を連ねていたが
もうほとんどが取り壊されたね、僕は当時の街並が書かれた地図を家に持っている、
昔の紙が青い青焼きのコピーのだがね。」
「そうですか、ちょっと訪れるのが遅かったみたいですね、その地図は貴重でしょうね。」
僕はうれしかった、この街にもこうやって歴史を保存している人がいた。
ただ、僕は撮影している時は滅多に人と関わりを持たない、いや本音は持ちたくないのだ。
被写体はあくまでも一つの被写体、それを僕の眼で見て僕の判断で切取る。
撮影のリズムは狂わしたくない、それが性に合っている。
大げさにいえばカメラを構えたとたん情はどこかに置いていきます。
だから、もう少しルポ魂でもあれば「そうですか、お世話になりますが、ぜひその地図を
拝見させて頂けませんか」といってマクロレンズでも取り出して複写させてもらうのだろうけど、
ダメなんですね水を向けられてもそういうノリにいかないのです。
そしてそのことをもったいないと思わないですね、そのお仕事はその専門家に任せておけば良いから。
前置きが大変長くなりましたが、今日の写真は国道16号線から1本中に入った「あずま通り」の
入り口に残っていたアーチ跡です。既にカフェーなどの名前が書かれていたと思われる看板は
取り外されひっそりと外枠だけが残っていました。
ここは横須賀、どこにでもある港町の歴史です。
安浦を歩くにあたり木村聡さんの「赤線跡を歩く」(発行:自由国民社)が大変参考になりました、
またこの本には「N的画譚」のneonさんが素敵な見返し画と貴重な写真も載せられています。
不思議な縁で僕はこの本に巡り会いました(感謝)。
余談ですがこのアーチを撮影した後ろの路地の奥にお巡りさんの立っている大きな瓦屋根の
民家がありました。そこは後でわかったのですが前首相の生家だったのですね。
それとは知らずに僕は反対側にあった小さな日本家屋を撮影していました(汗)。
【撮影場所】神奈川県横須賀市平成町あたり
【撮影機材】HASSELBLAD 503CW & Carl Zeiss Distagon 60/3.5CFi*
【使用フィルム】KODAK E100GX
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